...物体の動きを予測するというのは、その物体の位置が時間と共にどう変化するかを求める…つまり「世界線を決定する」ということです。物理の法則は(ひとまず)その世界線の性質を規定するものだと思ってください。(ひとまず、と書いたのは量子化1
「量子化」と聞いて、なにを言っているのだかわからない方は、細かいことを考えるとなにか起きるのだなぁ…と思っておいてください。今回の話には全く関係ありませんので、気にせず先を読み進めていってください。

一応、簡単な説明は付けておきます。(興味がある場合だけ読んでください)

ニュートン力学にしろ一般相対性理論にしろ、「物体の位置と速度はどこまでも正確に決定できる」という前提で話をしています。だけど本当に細かい物体の動きを測ろうとしたら、どう測定するか、測定方法が重要になってきます。

位置を測るには、光などをぶつけてみて、跳ね返ってきた光をキャッチして、物体がどこにあったかを調べます。だけど対象としている物体が本当に細かいものであったら、光などをぶつけた時点で、跳ね飛ばされてしまうでしょう。過去のある時刻にどの辺りにいたかはわかっても、測定した結果、すでに何かしらの速度を持ち、別の場所に移ってしまっていそうです。

速度を測るにしても、測定の影響で物体がどこにあるんだかよくわからなくなってしまいます。

ある程度、日常的な大きさを持っている物体に対しては、「位置と速度を常に決めておくことができる」と考えても問題はありません。測定の影響は微々たるものです。だけど、細かい物体を考えるときは「測定の影響」を気にしないわけにはいきません。

そういった「測定の影響(位置と速度を測ったらある程度よくわからない幅が残る)」を考えに入れた理論を構築することを「量子化」と呼んでいます。量子化の手法はだいたい定まっていて、大きな物体に対する理論がわかっていれば、量子化することができます。(もっと細かいことを言うと、そんなに易しいことではないんですけど…現に一般相対性理論の量子化にはとても苦戦をしていて、重力理論の量子化は、未だに解決できていない問題です)

以上の説明では満足できず、よほど興味が尽きないのであれば量子力学について勉強してみてください。

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...を考えると、その辺が微妙な問題2
量子化を行ったら、位置と速度をしっかり決めることができない…ということは、世界線だったはずのものが線じゃなく太さを持ってしまったり、世界線の傾きに幅が生まれたりするというわけです。

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...ニュートン力学でも慣性力というのがありましたね。つまり自由落下している人にとっては、重力と慣性力が釣り合って、力をまるで感じない状態になるということです。つまり「自分が落下しているとは思わない」わけです。(後に厳密には、重力と慣性力が完全に打ち消しあうことはないとわかる3
そんなもんなんだと思って、先を読んでください。どうしても気になるという方は、以下をどうぞ。

どういうことかというと、例えばエレベーターの中に閉じこめられた状態でエレベーターの糸が切れたとします。単純に考えると、エレベーターの中では、重力と慣性力がつり合って“無重力”になりそうです。

確かに測定者本人にとっては、そういっても良いのですが、このエレベーターがひたすら大きかったらどうでしょうか。測定者から離れた位置について考えたら、重力の方が大きかったり、慣性力の方が大きかったり…という差が出てきて、もはや“無重力”状態とは言えません。

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...では、そんな風に「傍から見たら曲線になっている世界線を、本人から見たら直線に見える」というそんな都合の良いことを数学で書き表すことができるのか…ということを検討してみる4
単純にグラフの目盛りの取り方を変えれば、曲線を直線にすることもできるんですが、それだけでは全ての話が丸く収まるわけじゃないんですね。いろいろ試してみると、どうやら曲がった時空を考えて、それを表現する数学を使うと良さそうだ…ということなんです。

いや…私は単純に曲線を直線にしようとしたこともないのですが、一般相対性理論ができるまでの時期は、いろんな試みが行われたのだろうと思います。

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... (そんなわけで、一般相対性理論を勉強すると、もれなく曲がった空間の幾何学5
細かい言い回しの問題なんですが、気になる人のために。

もちろん「曲がった時空」とか「曲がった空間」という数学の分野があるわけではありません。より正確な表現をするなら、等価原理と相対性原理を合わせた理論は、曲がった時空を使えばモデル化できそうである。そして、その曲がった時空というのは「リーマン幾何学」と呼ばれる数学の分野で表現することができる――ということです。

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...の勉強が付いてきます。なんのためにそんな勉強をしているのか、わからなくならないようにしましょう。等価原理と相対性原理を考え合わせた理論6
「相対性原理」を簡単に実現するためには、ベクトルとかテンソルについての知識があると便利です。そんなわけで、相対論の教科書にはベクトルとかテンソルの勉強も付き物です。

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...地球儀上で「直線」と言われても、よくわからないですよね。そこで“直線”という言葉を止めにします。どうするかというと、「その2点間を“道のりが最短になるような線で”結んで」みてください。これならできますね。(ちなみに、平面上での直線ってのは、2点間を最短距離で結ぶ線だと考えることもできますね)。さて、そのように2点間の道のりを最短にする線のことを、数学では「測地線」と呼んでいます7
そもそも道のりという言葉を考える以上、その空間ではどういう数字を距離を呼ぶのかをあらかじめ決めておかないと行けません。まあ、そういう数学的に厳密な話は、後の章もしくは本来の教科書のほうに譲ります。ここは、直感的にすんなり理解できるイメージで読み進めてしまってください。

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