小話・カビの生えた団子を食べた。
結論は上に述べた通りなんですが…少々事情を説明いたします。
今週の始め、祖母のうちから串団子をもらってきました。夜食にでも、ということで。その日は一旦大学に寄り、少し勉強してから寮に帰るという予定でした。そして予定通り、その日は寮に戻ったのです。
寮に戻ってみたものの、実は晩御飯が十分でそんなにお腹は空いていませんでした。そのため、もらってきた団子は「明日の朝飯にしよう」ということにしたのです。
もちろん団子は生もの――冷蔵庫で保管するのが一番安全です。しかし季節は冬。おまけに私の寮の部屋には夜間に動く暖房機具はありません。
人間は布団を被ることで暖をとり、周りはそれなりに冷えています。さらに冷蔵庫に入れるとせっかくの団子が固くなってしまったりもします。(あと共用の冷蔵庫なので、中身がよく盗まれます…)
そんな理由から「一晩くらい大丈夫」と判断し、室温放置することにしました。
いや、本当に、これなら大丈夫だったはずなんですよ。
これなら、本当に。・・・これならね。
――私の誤算は、寮に持ち帰っているはずのお団子を「暖房の行き届いた大学に置いてきてしまった」ことに尽きます。
登校してから、ちょっと恐かったけど、確かめました。食べられるかどうか。
見た目はそんなに変わってません。
においも変化ありません。(というか匂いはしません)
まあ、見た感じ、食べられそうです。
たかが一晩、温かい部屋に置き去りにしただけだもんね。大丈夫さ。
(実はもらってくる前日に買ってきてあったものだってことは忘れることにしました)
緑茶を煎れて準備万全整えました。
そして一口。
うん、食べられる。――ちょっと、すっぱいけど。
よく噛む。
うん、食べられる…けど。――ちょっと、すっぱすぎないかなぁ。
さらによく噛む。
これって、みたらし団子なのに甘くないや。――ひょっとして…醤油を入れすぎなのかなぁ…
さすがにそれは違うだろう、と思いました。
けど「味がちょっと変わっていても、別に悪くはなってない」とあまり気に掛けませんでした。
そして何の気なしに残っている団子を見てみると・・・何だろう、この白いぶつぶつは? ――げげ、これはひょっとしてカビか?!
なんてこった、まだ食べていない団子にカビが生えてるじゃないか!!
目に見えなかった方の面に、一面びっしりと!!
うぅ…さすがにいくらなんでもカビが生えてるものは食べられないよなぁ…
これは捨てるしかないか・・・
けど最初に手に取った団子が無事だったのは、不幸中の幸い・・・
――と思っていたら!!
さらに私は、別の団子のカビをも発見することができたのです。
そのカビはあろうことか――手に持っている串団子に付いているものでした。
つまり、食べかけの。
付着度合いからみて…食べた1個に付いていなかったとは考えられません・・・するとあのすっぱさは…
――大ショック!!
食べ物にカビを生やしてしまったことも十分ショックだったのに、それだけでなくそれを気づかずに食べていたなんて!!!
ちなみに、まだ飲み込んではいませんでした。飲み込む直前でした。どのくらい直前かというと――もう止められないくらいの直前でした。…諦めて、飲み込みました。
それにしてもショックです。
私は以前、小話「明太子ジュース」で次のように述べています。
断っておくが、私は“腐ったものを口にしたら
吐き出す”程度の生存本能は持っている。
腐ったものを口にしたら吐き出す程度の生存本能は――
腐ったものを口にしたら吐き出す程度の――-----
うぅぅ…すみません、前言を撤回させてもらいます。
しかし――しかし、これだけは言わせていただきたい。
少なくとも私は――「カビの生えた団子1個で音を上げるほどヤワな胃は、持ち合わせていません!!」
・・・いまのところ大丈夫。
(2001.12.26)