長時間、ものを書いても手が疲れないペンを求めて、万年筆を使い始めました。
以前、1500円で買ったPILOTの FVS-150R-TRM は、なかなかいい感じなんですが、500円で買った方は、どうもペン先のたゆみが気に掛かり、書き味に満足できなくなってきました。さらに実家で母の万年筆を使わせてもらったら、やたら書きやすい。人からもらったものとのことで、恐らく万単位の値段のもの。
・・・ひょっとして、万年筆の使い勝手は値段に比例する??!
どうせ理論物理なんて、ペンでもの書くのが仕事みたいなもの。本当にいいものなら、お金をケチるつもりはありません。・・・そう、5000円までなら! …あ、いや、1万円くらいまでなら、ひょっとすると。
2003年8月23日、夏の学校が終了し、自分にお疲れさまのプレゼントをしたい気持ちが満々。
帰りに新宿に立ち寄り、京王駅ビルの丸善に行きました。目的は万年筆。
店員さんに、使っている500円のペンを見てもらい、ペン先のたゆみの不満などを伝え、そしてストレートに「疲れないペンが欲しい」と伝える。
疲れないペンといっても個人によって好みが分かれるからと、いくつか見本を出して、試し書きをさせてくれました。
5,000円クラスに1本と10,000円クラスに1本、良さそうなのを見つける。
・・・だけど、どちらも決め手に欠ける。その2本のうちだと、まあ10,000円の方がいいかなぁ…と感じるけれど。
不満そうな顔をしていたのか、店員さんが少し高くなるけどと言って、もう1本ペンを出してくれた。
――良い。とても、良い感じ。
値段を聞くと、16,000円。値段も良い。予算を軽々オーバー。
どうせなら、6,000円をケチらずに、一番気に入ったものを買うのが長期的に見て、いいと思う。だけど、16,000円はバカにならない。たかがペンで…という気がしないわけでもない。
散々迷った挙げ句――お金が足りないのでと言い訳して、店を去る。
そしてさらに迷った挙げ句、最後は母に電話。
先に里帰りしたとき、誕生日に万年筆を買ってやろうかと言ってくれてたので、思い切っておねだりしてみる。誕生日プレゼントを要求するなんて、おそらく中学以降ついぞなかった。
で、オーケーをもらったので、改めて買いに行った。
20,000円までのスポンサーが付いたので、ついでに「値段が高いほど使い勝手がいい」の法則が成り立つのかどうか、店員さんにもうちょっと高いペンも見せてもらう。パンフレットにあった「エラボー」というギャグのような名前のペンに興味があったんだけど、あいにくそれは店頭になし。話を聞くと、好みには合わなさそう。
いくつか高いペンも書かせてもらったけれど、はじめの16,000円のペンが、一番好み。ペンの重さと重心のバランスがとても良い。
結局、選んだペンは――「デラックスウルシ(FD-1600R-B)」の細字。
・・・なんとも情けない名前。漆塗りの素敵なペンだけど、デラックスはないだろ、デラックスは。まあ、そのダサさもご愛敬か。(ペン自体は格好いい)
さて、大学に戻り、愛筆「でらっくすうるしぃ」にインキをセット。
試し書きをしているとはいえ、遠慮がちに書いてたので、実際どの程度イケるのかまでは、はっきりわからなかった。
・・・・・。
・・・グッド。素晴らしい。
試し書きの時よりもなめらか。ペン先がとても柔らかく感じて、素直に書ける。
この書き味には文句なし!!
そしてこのペンは、結構細身で、服の胸ポケットにもスルリと入っ――
――カララァン!
・・・・・。
・・・・・。
・・・なんで、買ってきたその日に落とすかなぁっ!!
慌てて拾い上げて、インク漏れを確認する。ペン先についてるインクは、カートリッジを取り替えるときに洗うとして、キャップの奥にインクが溜まっていそうだったのを、紙で吸い取ることにする。
・・・ぐにっ。
嫌な感覚。
中を覗いてみると、ペン軸を押さえるための金属片が1つ極端に曲がっている。このままでは引っかかって、キャップを差し込むことができない。
ひとまず、箸などを突っ込んで、金属片の曲がりを元に戻そうと試みる。
完全には戻らなくても、なんとかキャップできるくらいにはなった。キャップをするには少しコツが必要だけど。
1日使ってみて“万年筆は使えば使うほど、味が出てくる”ってのは、本当のことだとわかりました。
――けど、こんな味付けはいらない。
(2003.8.23)