小話のページ


大学の床屋

 最近、髪が伸びてきた。
 抜けてきた…というわけではないからいいけれど、いい加減、鬱陶しい。 そこで散髪に行くことにした。
 やはり散髪は安いところがいい。
 千葉大の前には学生1800円(カット&シャンプー)という店があるので、 千葉にいるならそこを利用するのだが、東京の方でそういった気の利いた店は まだ知らない。そこで、一番無難に大学の敷地内にある床屋を利用することに した。
 値段はカットのみで2000円。シャンプーをしてもらうと何と2600円にまで 跳ね上がってしまう。シャンプーなんて、寮に帰って自分でやればいいじゃ ん。カットのみでお願いした。

 カットが始まった。

「どれくらい切りますか?」
   散髪に行けば、必ず聴かれる質問。
「あ、短めにして下さい」
「バリカンは使いますか?」
「え・・・」
   その質問はされたことがない。
「あの…バリカンを使うというのは、どうなるんですか?」
「短くなります。ちょうど今、頭を丸めていった人がいるんで…」
「そ、そこまで短くしないで下さい」

 いや、本当にしたんだって、この会話。
 その後は特に何ということもなく、髪の毛は切られていく。そう、何と言う こともなかった。
 横と後ろの散髪がだいたい終わった。
 そのタイミングで、
「こんなもんでどうですか?」
と、鏡を使って途中経過を見せてくれ……ない。
 前髪を切り始める。
「前髪の長さは?」
と、あらためて確認……もしない。
 途中、天気の話とかそういった話はしていたけれど、結局、髪の毛に関する ことは最初の会話のみ。
 すべて終わってからも、目の前の鏡で見える範囲しか自分では確認できない し、何より「この長さでいい?」という確認がまるでない。まあ、だいたい長 さに文句はないけれど…
 そんなわけで、私は今、自分の後ろの髪の毛の様子がどうなっているのか、 さっぱりわからないのです。落書きされてても気づいていません。まあ、丸刈 りにはなっていないようですが…

 詰まるところ、大学の床屋は、なかなかスリリングな所だったということで す。

            以上。(2000.5.15)

#ひょっとしたら、後ろの髪を見せるための鏡をおいていないのかも…


小話の目次へ 
ホームページトップへ