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行列をベクトルに作用させる効果は

いま考えている$ A$の具体形はそのまま使います。そして固有ベクトルとは異な るベクトル$ \vec{v}$にこの行列$ A$を作用させるということを考えてみましょう。 行列を作用させる前のベクトルが、どんな位置に移動するのかを図にしてみましょ う。

具体的には

$\displaystyle A=\left(
\begin{array}{@{}rr@{}}
5&-2  -4&7
\end{array}\right)
\qquad
\vec{v}=\left(\begin{array}{@{}c@{}}
3 0
\end{array}\right)
$

を用いることにします。

このベクトル$ \vec{v}$に行列$ A$を作用させるとどうなるか。まずはそのまま計 算してみましょう。

$\displaystyle \left(
\begin{array}{@{}rr@{}}
5&-2  -4&7
\end{array}\right)
\l...
...
\end{array}\right)
=
\left(\begin{array}{@{}c@{}}
15 -12
\end{array}\right)
$

となりますね。図に描くと、
\includegraphics{fig1.eps}
です。

この $ (x,y)=(3,0)$という位置が $ (x,y)=(15,-12)$という位置へ動いている様子 が、固有値と固有ベクトルとどう関係があるか見るために、固有ベクトルの直線 を引いてみましょう。点線で表します。

\includegraphics{fig2.eps}
もとの $ (x,y)=(3,0)$という位置が、この固有ベクトルの直線の方向にどれだけ の成分を持っていたか考えてみると、
\includegraphics{fig3.eps}
こんな感じの図になるでしょう。 $ (x,y)=(3,0)$という位置から、それぞれの固有ベクトルに平行な直線を引いて います。その直線と$ x-y=0$$ 2x+y=0$との交点が、それぞれの軸方向の成分と なります。

行列が作用した後の $ (x,y)=(15,-12)$という位 置についても考えると、

\includegraphics{fig4.eps}
といったところでしょうか。

こうやって、固有ベクトルの方向に成分を考えていくと、行列を作用させるとい うことと固有値/固有ベクトルの関係が見えてきます。 実際に交点の座標を$ (x,y)$で求めてみると、次の 図のようなことが分かります。

\includegraphics{fig5.eps}

いかがでしょうか。 固有ベクトル方向の成分を、それぞれ対応する固有値倍したものが、行列 を作用させた後の位置になっているのです。 (一度ご自分の手で交点の座標を求めて、行列を作用させた後の成分がちゃんと3 倍、9倍になっていることをご確認ください)

具体例を示しただけで一般的な証明はしていませんが、

\framebox{
行列を作用させる$\Leftrightarrow$行列の固有ベクトルの方向に固有値倍
する効果
}
ということが見てとれます。 (この冊子では一般的な証明はやりません)


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平成17年8月29日