ここまでで見たように、行列をベクトルに作用させるというのは、その行列の固 有ベクトルの方向へそれぞれ固有値倍するという効果があります。 ということは、もともと単純なデカルト座標(直交座標)を使っていたと ころを、一旦、2本の固有ベクトルの方向を座標軸とする空間へ移ってしまった らどうでしょうか。
新しい座標軸を大文字を使ってと書くことにして、
この新たな座標軸の空間に移れば、行列を掛けるという操作がそれぞれの座標軸 の成分を固有値倍するという操作になります。作業を少し単純化できますね。
それでは、 新しい座標軸に移るという操作を、どのように書き表わせばいいでしょうか1。 新しい座標の成分というのは、 という形をしているはずです。 また新しい座標の成分は、 という形をしているはずですね。 さらにそれぞれの固有ベクトルの式は
とすると、新しい座標系への変換は、
それでは、このの座標系で計算をした後、元の座標に戻るにはど うしたらいいでしょうか? そのためには、 行列 の逆行列を左から掛ければいいですね。
念のため確認しますか?
これで、いつでも元の座標空間に戻ることができます。
さて準備が整ったところで、行列ってなんだったか思い出してみると、 「行列は、それぞれの固有ベクトルの方向を固有値倍する」という効果があ るのでした。つまり「行列をに掛け算するとき、の座標系 に移って、成分を対応する固有値として3倍、成分を9倍して、か らの座標に戻る」という操作をすればいいわけです。 そのことをちゃんと式で表すならば、
この操作を細かく見てくならば、
座標系に移る。 | ||
座標を3倍、 | 座標を9倍して、 | |
元の | 座標に戻る。 |
つまり
これが行列を固有値と固有ベクトルを使って表現しなおしたもの。 行列は、