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この記事の元 : 2005年度講義での配布資料

剛体の運動の決め方
山本明
2005.12.14

12月14日に配布した資料のHTML版を以下に公開します。印刷する方はPDF版をご利用ください。



簡単な剛体の運動を求める方法について、まとめておきます。
これまでの講義の復習のポイントも書いておきますので、参考にしてください。 復習のポイントについては、教科書・講義ノートを見返すとき重点的に眺めるようにしてください。

1 剛体の運動方程式

剛体とは大きさを持った物体である。そのため質点で取り扱った平行移動に加えて、回転について考慮しなければならない。 つまり並進の運動方程式と回転の運動方程式の2種類を状況に合わせて立てて、それらを解くことで、剛体の運動は定まる。

1.1 問題を解く手順(参考程度に)


  1. 働いている力の大きさ、方向を図に描き入れる。力がどの位置に働いているかにも注意すること。重力は剛体の重心の1点にかかっていると見なす。
  2. 並進の運動方程式を立てる。(重心の位置を求める)
  3. 回転の運動方程式を立てる。(慣性モーメントを計算する)
  4. 上記の運動方程式を組み合わせて、解く。
  5. 初期条件を課して、特殊解を求める。




1.2 並進の運動方程式

剛体の全運動量 $ \vec{P}=\sum\vec{p}$の時間変化に対する式が、剛体の並進運動を決める式となる。

重心に剛体すべての質量が集ったとみなし、外力の影響もすべてその重心にかかっているとして、あたかも質点におけるNewton方程式を立てれば良い。 つまり重心の位置ベクトルを$ \vec{r}_G$、外力の和を$ \vec{F}_o$と書いたとき、

$\displaystyle M\frac{d^2\vec{r}_G}{dt^2}=\vec{F}_o
$

が並進の運動方程式となる。$ M$は剛体の全質量。

1.3 回転の運動方程式

剛体の全角運動量 $ \vec{L}=\sum\vec{r}\times\vec{p}$の時間変化に対する式が、剛体の回転運動を決める式となる。

ここでは力が働いている位置も重要になる。さらに回転軸がどうなるかも重要なのだが、ひとまず話を単純にするために、回転軸は$ z$軸であるとする。 そのとき$ z$軸まわりの回転の角速度の大きさを$ \omega$、外力から生じる力のモーメントの和の$ z$成分を$ N_z$、慣性モーメントを$ I$と書いて、

$\displaystyle I\frac{d\omega}{dt}=N_z
$

が回転の運動方程式となる。なおここに表われる慣性モーメント$ I$

$\displaystyle I=\int dv \Bigl[\rho(x^2+y^2)\Bigr]
$

で求められる。

ただし回転軸がこのように$ z$軸に固定されていない場合は、角速度ベクトルを $ \vec{\omega}=\left( \begin{array}{@{}c@{}} \omega_x  \omega_y  \omega_z \end{array} \right) $ として、

$\displaystyle \left( \begin{array}{@{  }c@{ \quad}c@{ \quad}c@{ }}
I_{xx} ...
...gin{array}{@{ }c@{ }} N_x  [1.5em] N_y  [1.5em] N_z \end{array} \right)
$

となる。( $ N_x,N_y,N_z$は外力のなす力のモーメントの和の$ x,y,z$成分)

2 復習のポイント

質点の力学の場合、運動を決める方程式 $ \displaystyle m\frac{d^2\vec{r}}{dt^2}=\vec{F}$は、これが成り立つことを前提として理論が組み立てられているという式だった。 だからこの運動方程式を何らかの前提から導くという議論が行われることはない。

しかし剛体の運動を決める方程式(並進+回転)については、話が異なる。 これらの式は「剛体とは質点の集合体で、構成する質点同士の位置が変化しないもの」ということを用いて、証明・導出することができる。

どのような前提があって、どのような道筋で並進の運動方程式、回転の運動方程式が導けるのか、それを押さえておこう。



この文書について...

剛体の力学のまとめ

この文書はLaTeX2HTML 翻訳プログラム Version 2002-2-1 (1.70)

Copyright © 1993, 1994, 1995, 1996, Nikos Drakos, Computer Based Learning Unit, University of Leeds,
Copyright © 1997, 1998, 1999, Ross Moore, Mathematics Department, Macquarie University, Sydney.

日本語化したもの( 2002-2-1 (1.70) JA patch-1.9 版)

Copyright © 1998, 1999, Kenshi Muto, Debian Project.
Copyright © 2001, 2002, 2003, 2004 Shige TAKENO, Niigata Inst.Tech.

を用いて生成されました。

コマンド行は以下の通りでした。:
latex2html index.

翻訳は 山本明 によって 平成17年12月17日 に実行されました。


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