11月2日の物理学IBでは、前期の内容の総復習を行いました。その際に配布した資料のHTML版を以下に公開します。 印刷される方はPDF版をご利用ください。
物理は「ものの動きを予測する」のが目的。 そのために、物体の位置と時間と質量、そして力という概念を導入して、それらを数値で表し、その間に成り立つ関係式を仮定する。 その関係式とは、Newtonの運動方程式:
あとは状況にうまくあわせて、そのとき働いている力を見抜き、上記の式ののところに代入すれば、運動を求めるための微分方程式ができあがる。
手で解ける微分方程式はいろいろなパターンがある。そのなかで特に重要なものを3つ挙げておく。
なお運動方程式は2階の微分方程式なので、それを解く場合は といった変数を導入してみると、うまくいく場合が多い。考えている微分方程式を変数で書き直してみよう(そのとき変数という文字はもう式に残らないようにする)。ちなみに、運動方程式にの項があって、変数だけで書き表せない!という場合は、別の解法を試みるとよい。(特に次の節のものが適用できないかを疑ってみること)
変数について一般解を求められたら、 の一般解という新しい微分方程式を立てて、それを解く。
この方程式を眺めてみると-- はで微分しても、ほとんど形を変えないような関数みたいだなぁ…それだとこの方程式を成立させることができそうだなぁ…と考える。 そこで、の形として、だいたい
実際に代入してみると、方程式を成り立たせるために
2階の微分方程式の一般解には、不定定数が2つ必要(後述)。 しかし、 ここで上記の条件式(2次方程式)を満たすの値も2つあるはずだから、それを とすると、
もしもの条件式が重解を持っている場合は、 に対して、次の定数変化法を用いればよい。結果としては、 が一般解となる。
ちょっと複雑になった微分方程式を解くためには、この定数変化法を覚えておくと、応用範囲が広くなる。
これは考えている微分方程式を成り立たせそうな“およそ”の解の形を求めて、不定定数と考えていた部分をに依存すると考え直して元の微分方程式に代入、辻褄が合うような条件を求める…という手法。
例えば、
もっと具体的な例を出すと、
このが実は定数でなく関数だった(``定数変化''法!)と考え直して、 を微分方程式に代入してみる。すると左辺は、
階の微分方程式を解くというのは、方程式の両辺を回、不定積分するようなものである。 そのため階の微分方程式を解くと、個の不定定数が現れる。 不定定数が個含まれている解(方程式を成り立たせる関数)を、一般解と呼ぶ1。
なにか条件を課して、一般解から不定定数の値を決めていき、すべての不定定数の値が決った解を、「特殊解」と呼ぶ。 物理学では、初期条件や境界条件などを考えて、最終的には特殊解を求める。
次の微分方程式の一般解を求めよ。
(1) はの関数。
(2) はの関数。は定数。
(3) はの関数。は定数。
(4) はの関数。は定数。
(5) はの関数。は定数。
導出はNewton方程式の両辺に を掛け算して、両辺を時間積分すれば良い。
力と という関係があるポテンシャルエネルギーを用いて、
運動の特徴的な状態(エネルギーを求めやすい状況)を抜き出して、エネルギーが変化しないという条件式を作ると、便利な場合もある。
振り子の運動を考えてみる。 振り子の糸の長さを、質量をとする。 最下点から角度を測ることにして、振らせはじめの角度を とする。またポテンシャルエネルギーの基準も、振り子の最下点とする。
(1) 振らせはじめの時点での全エネルギーを求めよ。
(2) 任意の角度のときの全エネルギーを求めよ。ただしそのときの振り子の速度をとする。
(3) 振り子の速度をの時間微分を用いて表現せよ。
(4) (1)(2)(3)で求めた内容から、に対する微分方程式を立てよ。
(5) (4)で求めた微分方程式を使って、この振り子の周期を求めよ。
(復習といいつつ、この話題は前期にやってません。積分はすごく難しい!!)
答えのみ。
(1) は不定定数。
(2) は不定定数。
(3) は不定定数。 求め方によってはでなく といった形になるかもしれない。けど だと考えれば同じ形 !
(4) は不定定数。
(5) は不定定数。
(1) 重力は保存力。ポテンシャルエネルギーは基準点からだけ高いところでという値になる。よって、
(2)
(3)
(4)
(5) から、 と変形して、両辺を積分してみよう。積分は振り子の最下点から最高点までとする。つまりそれは全周期の 。
ここまでできたら上出来。この積分は となるへ変数変換すると計算できる。(この積分を調べるなら「楕円積分」がキーワード。物理のかぎしっぽ「楕円積分 〜 振り子の周期を求める」をお勧め)
計算結果は、 となる。
どんなときに、どんな力が働くのかを知っておこう。
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技術的なことだが、位置をベクトルで(数式で)表すことにも慣れておこう。同じ基底ベクトルを用いて、を表すようにする。
あとは問題に応じて考える。
後期は質点がたくさん集まった状態(``質点系'')の説明を行う。(その特殊な場合として、「剛体」に特化した話をする)
この文書はLaTeX2HTML 翻訳プログラム Version 2002-2-1 (1.70)
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Niigata Inst.Tech.
を用いて生成されました。
コマンド行は以下の通りでした。:
latex2html index.
翻訳は 山本明 によって 平成17年12月17日 に実行されました。